序文

楽曲には「明るい」「暗い」「楽しい」「悲しい」といったそれぞれの雰囲気があります。曲の速度や、曲想による違いというのも大きいのですが、根本的には「調性」の違いによる雰囲気の違いが大きくあります。
同じメロディー、テンポの曲であっても移調すると、雰囲気が違って聞こえるものです。

基本的に長調、短調という大きな二つがあり、「長調は明るく」「短調は暗い」という性質を持ちます

たとえば明るくテンポのよい曲であれば長調を、暗く悲壮感のある曲であれば短調を選択したほうが、よりそのイメージに近い曲になるでしょう

それぞれの調ごとに、色々な性格があり、それを読んでみるだけでもそれなりに面白いかな、とは思いますので、ごらんくださいませ。

長調(dur)

長調の楽曲は主に「明るい」「楽しい」といったイメージを持ちます。よく聞く「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド」は長調の代表格で「ハ長調(C-dur)」です。ここでは、13種類(異名同調があるため実質12種類)の長調を紹介させていただきます。

※「dur」はドイツ語で長調の意味

ハ長調(C-dur)
調号位置:無し
主音:ド
全く黒鍵を用いない基本調です。♯や♭がないため、素朴で安定感があります。 調号が増えれば増えるほど、調は屈折した性質を持ちます。
ト長調(G-dur)
調号位置:ファに♯
主音:ソ
少年のような明るさを快活さを持ち合わせる調です
ニ長調(D-dur)
調号位置:ファ、ドに♯
主音:レ
黄金の光を放つ、青年期にふさわしい調で、ミサ曲のグロリア(栄光あれ)などには最適とされます
イ長調(A-dur)
調号位置:ファ、ド、ソに♯
主音:ラ
きらびやかですが、澄みきった音調によって、わずかな孤独感をあらわします
ホ長調(E-dur)
調号位置:ファ、ド、ソ、レに♯
主音:ミ
古風なきらびやかさを持ち、チェンバロの音色となります。宮廷風の社交音楽に適しています
ロ長調(H-dur)
調号位置:ファ、ド、ソ、レ、ラに♯
主音:シ
重々しい、儀式的な曲想をもたらします
嬰ヘ長調(E-dur)
調号位置:ファ、ド、ソ、レ、ラ、ミに♯
主音:ファ(♯)
♯が増すことによりきらびやかさが増し、異国的で非現実的な響きとなります
ヘ長調(F-dur)
調号位置:シに♭
主音:ファ
ホルンにふさわしい調で、柔らかさ、優しさを表現します。子守唄に最適です
変ロ長調(B-dur)
調号位置:シ、ミに♭
主音:シ(♭)
クラリネットに主に用いられる調で、多少くすんではいますが、滑らかな動きに適する調です
変ホ長調(Es-dur)
調号位置:シ、ミ、ラに♭
主音:ミ(♭)
落ち着きと包容力を持つ調です。どっしりとした調によく似合います
変イ長調(As-dur)
調号位置:シ、ミ、ラ、レに♭
主音:ラ(♭)
♭が増えるとしっとりとした趣が強まります。大人っぽい、高貴な音色で、ロマン派に好まれました
変ニ長調(Des-dur)
調号位置:シ、ミ、ラ、レ、ソに♭
主音:レ(♭)
退廃的な音色を持ち、ロマン派のピアノ曲(弾きやすさから)に好まれた調です
変ト長調(Ges-dur)
調号位置:シ、ミ、ラ、レ、ソ、ドに♭
主音:ソ(♭)
事実上、「嬰ヘ長調」と異名同調(実際に鳴る音は全く同じ)ですが、ほぼ全ての音が半音さがっているので、しっとりとした落ち着いた感じになります

短調(moll)

短調の楽曲は主に「暗い」「悲しい」「重い」といったイメージを持ちます。ここでは、14種類(異名同調があるので実質12種類)の短調を紹介させていただきます。

※「moll」はドイツ語で短調の意味

イ短調(c-moll)
調号位置:無し
主音:ラ
短調の基本調です。澄みきった、混じりけのない素朴な悲しみを表現します
ホ短調(g-moll)
調号位置:ファに♯
主音:ミ
内に秘めたくらい情熱を感じさせます
ロ短調(d-moll)
調号位置:ファ、ドに♯
主音:シ
H音それ自身が持つ、不吉で悪魔的で、最も暗い感じの調です
嬰ヘ短調(a-moll)
調号位置:ファ、ド、ソに♯
主音:ファ(♯)
きらびやかですが、張り詰めた緊張感をもたらします
嬰ハ短調(cis-moll)
調号位置:ファ、ド、ソ、レに♯
主音:ド(♯)
冷たい、金属的な響きを放ちます
嬰ト短調(gis-moll)
調号位置:ファ、ド、ソ、レ、ラに♯
主音:ソ(♯)
本来、短調では最もきらびやかなはずですが、あまり使用されることはありません
嬰ニ短調(dis-moll)
調号位置:ファ、ド、ソ、レ、ラ、ミに♯
主音:ファ(♯)
変ホ短調と異名同調であり、めったに使われる事はありません。
ニ短調(d-moll)
調号位置:シに♭
主音:レ
素朴で、ひなびた味わいを持ちます。木管楽器に適した調です
ト短調(g-moll)
調号位置:シ、ミに♭
主音:ソ
深く透明な悲しさをたたえています。モーツァルトのト短調は死を予感させる調として有名です
ハ短調(c-moll)
調号位置:シ、ミ、ラに♭
主音:ミ(♭)
最も荘厳で、悲劇的な調です。ベートーヴェンが好んだ調として有名です
ヘ短調(f-moll)
調号位置:シ、ミ、ラ、レに♭
主音:ファ
高貴で、内面の苦しみや悲しみを想像させます
変ロ短調(b-moll)
調号位置:シ、ミ、ラ、レ、ソに♭
主音:シ(♭)
ロマン派に好まれた調です。暗く、くすんだ響きを持ちます
変ホ短調(es-moll)
調号位置:シ、ミ、ラ、レ、ソ、ドに♭
主音:ミ(♭)
落ち着いた、多少の温かさも感じられる調です
変イ短調(as-moll)
調号位置:シ、ミ、ラ、レ、ソ、ド、ファに♭
主音:ラ(♭)
「嬰ト短調」と異名同調であり、めったに使われる事はありません。 しっとりとした沈んだ色彩を持っています