対象楽曲:「屋根裏の少女」「檻の中の遊戯」「檻の中の花」「yaneuraroman」
屋根裏の少女から続くMichele Malebranche三部作。+Roman第2のボーナストラックであるyaneuraroman。この記事ではそこについて語ります。
この物語は、「檻の中の花」で語られているように、3つのステージに分けられます。まずは、全ての事件が現実の中で連続しているという仮定のもとに各ステージごとに考察します。
「私…お友達が欲しいな…」
彼女は、キャンパスに対して望む「お友達」を描き、それを現実化してしまったのではないでしょうか。それは、あるいは狂気を孕んだ異形だったのかもしれません。それ故に、狂人に堕ちた父親でさえ、娘の異常さに気がつき、娘を殺そうとした。
…あるいは、父親は狂人などではなく、最初からミシェルに潜む異能に気がついていたのか。
ミシェルはこの時、父親を殺害します。しかしその殺害方法は年齢相応の少女には到底不可能なほどに凄惨で不可解な変死だったようです。また、証拠もありません。
「そうだ…パパの幸せを描いてあげる」
この時、ミシェルは何かをキャンパスに描き、具現化したその存在によって父親を殺害したと考えられます。そして父親の血によって「赤いキャンパス」になったのではないでしょうか。
おそらく父を失い、身寄りを失ったミシェルを叔父であるArmand Ollivier(アルマード・オリヴィエ)が引き取ったのでしょう。しかし、叔父が求めたのはミシェルの若い肉体であったと見受けられます。檻の中の遊戯の冒頭を素直に読むのであれば、叔父はミシェルを抱きながら、首を絞め絞殺しています。
あるいはそれが彼なりの狂った愛情だったのかもしれません。若いミシェルを若いままに保ち、自らのそばに置く方法。しかし、そこに異常が発生します。おそらく…その後の叔父の行動を見るに、ミシェルは蘇生したのです。"識られざる幕間"の「素早く抱き寄せ 首筋に熱い接吻」という部分からも見るに、彼女は吸血鬼に近い特性を得ているものと考えられます。
そこで叔父も危機を覚えたのでしょう。ミシェルの力が異常であることに。故に彼はミシェルを完全に殺そうとした。それが「もう一度この手で彼女を…」という部分だと考えられます。そして、彼はミシェルを殺害し、その遺体を用意した棺桶の中に入れて葬ろうとします。
しかし、ここですでに叔父はミシェルの異能に踊らされていただけに過ぎなかったのだと思います。ミシェルは先に得ている何らかの力によって叔父に夢や幻影を見せていたのかもしれません
いずれにせよ、叔父は逮捕された時点で「半狂乱で笑いながら庭に穴を掘っていたところを…」という状態であったため、酷い錯乱状態にあった事は確かなようです。
ミシェルの作り出した「檻」の中で夢を見ているという事を忘れ、狂っていった叔父。それが「檻の中の遊戯」における「忘レモノ」だと思われます。
そして、「絞殺・死体遺棄未遂事件」については、警察がミシェルを見つけた時点ではミシェルは確かに死んでいたのかもしれません。しかしその後"幸運にも"息を吹き返した生存者となったのではないでしょうか。無論、彼女の場合は"幸運"ではなく"必然"なのでしょうが。
そして……彼女は、古い「ミシェル」という肉体を脱ぎ捨てて、転生した。yaneuraromanでは「さぁ、生まれておいでなさいHiver…」という下りがあります。これは、正にミシェルが何らかの黒魔術的な儀式を行い、イヴェール(Hiver)という存在への転化を果たした瞬間なのではないでしょうか。
Hiverという単語が持つ意味は「冬」です。2月4日という冬に転生した者にとっては、その名前はふさわしいものではないでしょうか。しかし彼女の転生は不完全で、正常な転生を行う事はできなかった。
それゆえに死でも生でもない狭間に囚われてしまい、抜け出せなくなったのではないでしょうか。そしてその「右手に神を、左手に悪魔を宿した…」という異能は、「双子の人形」へと転化し、その能力で自らが完全に転生し、生まれてくるための物語を紡ごうとあがいている。
それこそが「Roman」なのだと考えます。
※Hiverは「右手に死を、左手に生を」でミシェルと能力が逆転しています。これは、彼女が転生の際に性転換を行ったために能力自体も逆転したのではないかと考えます。
対象楽曲:「緋色の花」「緋色の風車」
Lostに収録されている「緋色の花」と少年は剣を…とRomanに収録されている「緋色の風車」。この2曲はタイトルの時点で非常に強い関連性を匂わせてくれています。そして歌詞を見てみると、さらに関連が見えてくると思います。
まず、作品としては「緋色の花」のほうが先なのですが、物語的な流れとしては「緋色の風車」が先だと思われます。理由は以下のとおりです。
■1.「緋色の花」からの視点
この作品に出てくる花は、森に迫ってくる兵士に対して戦おうとします。しかし、
"けれど大地に縛られた体は動かない"。
私はこの一節から、この作品の"花=少女"は自らが死に、"森の魔性"に取り込まれ、花と化して自らを殺した者達を憎み続けている、哀れな少女の魂であると考えます。
花は自らが動けない事を"縛られている"とは称さないでしょう。なぜなら動けないのが当然なのですから。"縛られている"と感じるのは、もともとが動ける存在だったから、です。
自分がすでに人という存在ではないという事実。それこそがこの歌における"忘レモノ"ではないでしょうか。
しかし、この作品にはこの"花"以外の少女は登場しません。この少女が誰であるのか。どうして死んだのか。何故、兵士たちを憎むのか。その答えが「緋色の風車」にあると考えます。
■2.「緋色の風車」からの視点
こちらでは、少年と少女の住む村が突然何かの軍隊に襲われ、二人は森の中へ逃げ込みます。
しかし、二人は残念な事に逃げ切る事はできずに、見つかってしまいます。
少年は走り逃げ、少女はただ一人、死を迎えます。
そしてその無念さ、絶望を孕んだ魂が森の魔性に取り込まれ"緋色の花"となったものだと思われます。……あるいは、自分を置いて逃げた少年への恨みもあるのかもしれません。
以上よりこの2曲は、少女が死に至るまでと、死後の行方であると考えられます。
次は、この2曲の背景にある時代、共通点についてみてみましょう。
■この2曲に出てくる軍隊とは何者なのか
Sound Horizonの作品群の中で、大規模な軍隊、戦争が語られる話は今のところひとつしかありません。それがChronicle 2ndにおける「薔薇の騎士」〜「聖戦と死神」に至るブリタニア王国と神聖フランドル帝国を主軸とした大戦です。
この劇中、フランドル帝国はブリタニアに対して聖戦と称し、大規模な虐殺を行っています。この残虐性は「緋色の風車」における兵士達の残虐性と同一視できます。それ故、この曲の舞台はブリタニアであると見て取れます。
しかしここでひとつ問題があります。緋色の風車=ムーラン・ルージュ (Moulin Rouge)とは、フランス語です。舞台がイギリスをモチーフとしたブリタニアなのに、使われている語句がフランス語というのは些か奇妙で矛盾しています。
この問題の解決に、ムーラン・ルージュとは物理的な風車を示すものではなく"剣や槍を振り回し、次々に人々を虐殺していく兵士の姿、舞い散る血しぶき"こそがムーラン・ルージュなのであると考えます。
これは、「見えざる腕」において"首を刈る姿、まさに風車"という一節がある事からも、そう間違ってはいないと思われます。つまり、フランスをモチーフとしたフランドル帝国の軍隊。それこそが緋色の風車=ムーラン・ルージュ (Moulin Rouge)なのだと考えればいいと思います。
■仮説:2つの「緋色の風車」
「少年は剣を…」 と 「Roman」に収録された「緋色の風車」。この2曲はほとんど同じですが、一部の単語が「少年は剣を…」の時は英語だったものが、「Roman」ではフランス語に置き換えられています。
もちろん「Roman」はその他の曲の単語もフランス語で統一されているため、単に合わせたという考え方もできるでしょう。
ですが、ここに意味があるとしたらどうでしょう?
もしかしたら、この「緋色の風車」の情景は、ブリタニア、フランドル帝国どちらでもおきた事なのかもしれません。ゆえに、英語とフランス語で1曲ずつ存在する。大戦では後半、フランドル帝国が劣勢となりますが、この際、ブリタニアが逆に虐殺を行わなかった、と保証する材料はないわけです。
まあ、単に私の考えすぎかとも思いますが^^;
最後に。
「緋色の花」は「Lost」の中において"6番目の記憶"です。そして、「緋色の風車」は「Roman」において、"トラック6"です。これは偶然でしょうか。私には意図的に合わされたもののように見えてしまいます。