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緋色の風車と花

対象楽曲:「緋色の花」「緋色の風車」

Lostに収録されている「緋色の花」と少年は剣を…とRomanに収録されている「緋色の風車」。この2曲はタイトルの時点で非常に強い関連性を匂わせてくれています。そして歌詞を見てみると、さらに関連が見えてくると思います。

まず、作品としては「緋色の花」のほうが先なのですが、物語的な流れとしては「緋色の風車」が先だと思われます。理由は以下のとおりです。

■1.「緋色の花」からの視点
この作品に出てくる花は、森に迫ってくる兵士に対して戦おうとします。しかし、

"けれど大地に縛られた体は動かない"。

私はこの一節から、この作品の"花=少女"は自らが死に、"森の魔性"に取り込まれ、花と化して自らを殺した者達を憎み続けている、哀れな少女の魂であると考えます。
花は自らが動けない事を"縛られている"とは称さないでしょう。なぜなら動けないのが当然なのですから。"縛られている"と感じるのは、もともとが動ける存在だったから、です。
自分がすでに人という存在ではないという事実。それこそがこの歌における"忘レモノ"ではないでしょうか。

しかし、この作品にはこの"花"以外の少女は登場しません。この少女が誰であるのか。どうして死んだのか。何故、兵士たちを憎むのか。その答えが「緋色の風車」にあると考えます。

■2.「緋色の風車」からの視点
こちらでは、少年と少女の住む村が突然何かの軍隊に襲われ、二人は森の中へ逃げ込みます。
しかし、二人は残念な事に逃げ切る事はできずに、見つかってしまいます。
少年は走り逃げ、少女はただ一人、死を迎えます。
そしてその無念さ、絶望を孕んだ魂が森の魔性に取り込まれ"緋色の花"となったものだと思われます。……あるいは、自分を置いて逃げた少年への恨みもあるのかもしれません。

以上よりこの2曲は、少女が死に至るまでと、死後の行方であると考えられます。

次は、この2曲の背景にある時代、共通点についてみてみましょう。

■この2曲に出てくる軍隊とは何者なのか
Sound Horizonの作品群の中で、大規模な軍隊、戦争が語られる話は今のところひとつしかありません。それがChronicle 2ndにおける「薔薇の騎士」〜「聖戦と死神」に至るブリタニア王国と神聖フランドル帝国を主軸とした大戦です。
この劇中、フランドル帝国はブリタニアに対して聖戦と称し、大規模な虐殺を行っています。この残虐性は「緋色の風車」における兵士達の残虐性と同一視できます。それ故、この曲の舞台はブリタニアであると見て取れます。

しかしここでひとつ問題があります。緋色の風車=ムーラン・ルージュ (Moulin Rouge)とは、フランス語です。舞台がイギリスをモチーフとしたブリタニアなのに、使われている語句がフランス語というのは些か奇妙で矛盾しています。
この問題の解決に、ムーラン・ルージュとは物理的な風車を示すものではなく"剣や槍を振り回し、次々に人々を虐殺していく兵士の姿、舞い散る血しぶき"こそがムーラン・ルージュなのであると考えます。

これは、「見えざる腕」において"首を刈る姿、まさに風車"という一節がある事からも、そう間違ってはいないと思われます。つまり、フランスをモチーフとしたフランドル帝国の軍隊。それこそが緋色の風車=ムーラン・ルージュ (Moulin Rouge)なのだと考えればいいと思います。

■仮説:2つの「緋色の風車」
「少年は剣を…」 と 「Roman」に収録された「緋色の風車」。この2曲はほとんど同じですが、一部の単語が「少年は剣を…」の時は英語だったものが、「Roman」ではフランス語に置き換えられています。
もちろん「Roman」はその他の曲の単語もフランス語で統一されているため、単に合わせたという考え方もできるでしょう。

ですが、ここに意味があるとしたらどうでしょう?
もしかしたら、この「緋色の風車」の情景は、ブリタニア、フランドル帝国どちらでもおきた事なのかもしれません。ゆえに、英語とフランス語で1曲ずつ存在する。大戦では後半、フランドル帝国が劣勢となりますが、この際、ブリタニアが逆に虐殺を行わなかった、と保証する材料はないわけです。

まあ、単に私の考えすぎかとも思いますが^^;


最後に。
「緋色の花」は「Lost」の中において"6番目の記憶"です。そして、「緋色の風車」は「Roman」において、"トラック6"です。これは偶然でしょうか。私には意図的に合わされたもののように見えてしまいます。

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